会長挨拶

日本遺伝学会長 遠藤 隆 

ごあいさつ

2013年1月から日本遺伝学会長に就任いたしました京都大学農学研究科の遠藤隆でございます。就任開始にあたり、一言ごあいさつを申し上げます。日本遺伝学会は、1920年設立の長い歴史と伝統を誇る学会です。

1900年のメンデルの遺伝法則の再発見後、モルガンによるショウジョウバエの染色体地図作製、1953年のワトソン・クリックによるDNAの2重らせん構造の発見、組換え技術による遺伝子操作の実現、2000年のヒトゲノム解析の成功、次世代シーケンサーの登場などの画期的な出来事と共に、遺伝学は20世紀から21世紀の現在にいたるまで生命科学の中心的学問分野として大きな発展を続けています。しかし、遺伝学の発展と同時に遺伝学は多岐にわたる個別の分野に特化して行き、個々の研究者にとっては生物を包括的に理解することがますます困難になっているのではないかと危惧しております。

日本遺伝学会の主要な活動は、機関誌としてのGenes & Genetic Systems(年6号)の発行と年一回の大会であります。Genes & Genetic Systemsは前身の遺伝学雑誌(1921年創刊)を引継いだ英文学術雑誌であり、分子遺伝学から進化遺伝学までの幅広い分野をカバーしています。日本遺伝学会の年1回の大会は全ての発表を口頭で行うことを伝統としており、遺伝子発現から集団・進化までの多様なテーマを一堂で聴講することができます。また、2012年大会からは英語だけのセッションも開始し、若い研究者に口頭発表・英語発表の貴重な機会を提供しています。さらに、年大会に併せて、一般市民向けの公開講演会を開催して遺伝学の普及を図っています。このように、日本遺伝学会は、遺伝に纏わる諸問題を正当に議論したり社会に向かって提案したりするフォーラムとしての役割を強く意識して、遺伝学に関わる幅広い活動を推進しています。

学会および学会機関誌を取り巻く状況は厳しさをましております。特に一般商業誌の攻勢により多くの機関誌は苦境に立たされ、商業誌の傘下に入っています。しかし、日本遺伝学会はGenes & Genetic Systemsを独自に継続・発展させる道を選んでおります。Genes & Genetic Systemsは日本遺伝学会員だけでなく非会員にも広く門戸を開いておりますので、生命科学に限らず社会科学の分野でも遺伝に関する論文の投稿をお待ちしております。年大会に関しましては、口頭発表こそが真に学会発表に価するものであるとの立場を今後も継続していきます。未だ会員でない皆様にはこの機会に日本遺伝学会へのご入会をお勧めいたします。

日本遺伝学会長

遠藤 隆